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怪談の季節

欧米では怪談を語るのは冬の夜だそうだ。日本では夏のものというイメージが強いが、蒸し暑い気候なので背筋を冷そうというものだろう。ということで、怪談・・・ふうのを。

井戸の中で
 ひと気のない神社の境内の奥の、深い森の中に誰も知らない枯井戸がある。その底には呪いをかけられた人形が何十体も積み重なっている。
「なぜこんな目に遭わねばならないのだ。俺が何をしたというのだ」一番上の、比較的新しい人形がつぶやく。新しいといっても、井戸に捨てられてから十年以上は経っていそうなのだが。
「私達はなにも悪いことはしていないわ。私だって、ただ田舎のデパートで売られていた普通の人形よ」
「俺達はただの依り代なのさ。いわば入れ物。呪いというやっかいなものの入れ物さ」
 上のほうにかたまった人形達がつぎつぎと呟きだす。
「下のほうの連中はどう思っているのだろうね」
「もう土になっているよ、きっと」
「誰かが私達は呪いの入れ物だと言ったわね。だったら中味の呪いはどうなっているのかしら」
「残っているさ。でないとこんなところに捨てられたりはしない」
「呪いは俺達と違って、朽ち果てることはない」
「下の、土になった連中に入れられた呪いも残っているのだろうか」
「その分凝縮されているはずさ」
 井戸の上で声がした。
『この井戸じゃないかしら、ネットで紹介されていた隠れパワースポットって』
『みたいね。ほら、中に何かあるわ』
『人形のようだわ』
『よく見えないわ』
『そんなに乗り出したら危ないわよ』
 井戸の上から射していた光が、覗きこんだ人影によって遮られた。それを見越していたかのように、井戸の底、人形たちが話していたずっと下の、いつ頃から溜り、凝縮したのかもわからない呪いの塊が、ものすごいスピードで人影に向かって昇っていった。

実は12月なのでクリスマスにちなんだお話を載せようと思ったのだが、これがなかなか思いつかない。これまでも12月にクリスマスの話なんか載せていないので、まあいいや、ということにした。お粗末さまでした。


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たけうち

枯井戸という件で既に怖いし、そこにたくさんの人形が捨てられているというので、さらに怖いです。怖いもの見たさでのぞき込んだら、きっと大変なことになるのに、そうしたい自分がいたりします。呪いの腐葉土のように思いました。
by たけうち (2015-01-10 06:35) 

深田亨

たけうちさん、いらっしゃいませ
廃墟とか、古井戸とか、開いたマンホールのふたとか、彼女のスマホのメールとか(これは違いますね)・・・なんか惹かれますね。つい覗いてみたくなります。
昔々、家の近所に西洋館の廃墟がありました。べつに霊とかいたわけじゃないですが(たぶん・・・)、そこに入りこんで家具も何もないひっそりした部屋に西日が射しこんでいた記憶があります。四~五歳ぐらいじゃなかったかと思います。
by 深田亨 (2015-01-14 01:36) 

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